あの大物漫画家たちが絶賛した『ポテン生活』誕生の裏話

このたび日めくりカレンダーを発売する木下晋也さんには、たくさんの作品シリーズがあります。

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木下晋也の「日々、ポテン生活2022」カレンダー

そのなかで代表作と目されるものはといえば？　そう、2008年から週刊「モーニング」で連載を開始し、コミックは全10巻に及んだ『ポテン生活』でしょう。
作品が生まれた経緯や思い出を、モーニング連載当時の担当編集者・劔持聡人さんと木下晋也さん（以下敬称略）に、語り合っていただきました！

木下：「モーニング」へ持ち込みに行ったとき、作品をみていただいたのが劔持さんでした。

劔持：持ち込みはたまたま電話をとった人がそのまま対応することになっているので、出合えたのは偶然。でもラッキーでした。そのときに持って来てくださった8コマがどれも面白くて、聞いたら家には何十本も完成原稿があるっておっしゃったので、その全部の中からネタを選抜して新人賞に出しましょうと提案しました。後日、バランスを考えながら8コマネタを10本くらいと4ページネタを2本選んだという流れです。

木下：持ち込みをしても脈ナシのときは、「また描いたら持ってきてください」と言われておしまい。でもこのときは違ったので、ひとつ先へ進めたんだと実感できてうれしかったですね。

劔持：直近にあった「モーニング」の「MANGA OPEN」という賞に出すこととなりました。当時の選考委員は、かわぐちかいじさんと、さだやす圭さん。おふたりが揃って絶賛し、木下さんが大賞に決まりました。編集部内の予想とはやや違ったので、ちょっと驚きましたけど（笑）。

木下：わかります。優勝とか１位といった言葉とは、いつも縁遠いタイプなので（笑）。

劔持：直後に編集長に呼ばれ「よし、連載やるぞ」と言われました。やった！　と喜んでいたら、「毎週１ページな」と。え、１ページですか？　とポカンとしたのを覚えてます。でもそのあとすぐ、増刊として出ていた「モーニング・ツー」からも連載の声がかかって。

木下：当時の「モーニング」のウェブサイトでも毎週掲載させてもらえることになりました。

劔持：本誌連載は１ページだけど、いきなりひっぱりだこでもあったわけです。かなりの本数のストックがあったので、手元にあるなかからどれをどの媒体に出すか、そのつど僕が決めていました。木下さんにはとにかく新しいネタを描いていくことに専念してもらって。

木下：そうでしたね、毎週ネームを見てもらって、オーケーをもらったものはペン入れして仕上げていく。なんとかストックを減らさないようにとがんばりました。

劔持：木下さんの場合、基本的にボツになるネタはほとんどありませんでした。ひょっとするとこういうネタは見方によって嫌がる人がいるかもとの恐れがあるときだけ、念のため止めておきましょうかというくらいで。ネタ自体はいつだっておもしろいので、ダメ出しする理由がない。ただ、どのネタに強く反応するかは人それぞれなのが不思議です。

木下：描いているときは「この感じがすごくおもしろいでしょう？」と一応は自分でも自信を持っていて、読んだ人にもきっとこの感じは伝わるはずだと思っているんですけど、実際には人によって「これのどこがおもしろいの？」となることもある。そのジャッジは読者の方に委ねるよりほかないですね。

劔持：どのネタにハマるかは、人によってかなり違ってきますね。今週はスゴいネタを揃えたぞと思って掲載しても、他の編集者から「今週はちょっとピントがずれてたんじゃない？」と言われたりすることもあったし、その逆もありました。こちらとしては毎回変わらず、「こりゃおもしろい、みんな笑ってくれるはず！」と思って送り出していたつもりではありますけど。

木下：僕としてもあんなゆるいマンガではありながらも、気持ち的には毎回大爆笑を狙って描いているつもりで…（笑）。

劔持：はい、わかってますよ（笑）。ですから編集側としても、作品の謳い文句やPRの文言として、「くすりと笑える」とか「シュールな笑い」といった言葉は一度たりとも使いませんでした。

木下：今回、日めくりカレンダーをつくるにあたって、「どれを収載するかの参照したいので、描いた本人が気に入っているネタを挙げてください」と言われ選んでみたんですけど、絞り切ることがぜんぜんできませんでした。それに、昨日選ぶのと今日選ぶのでは、まったく違うラインアップになってしまいそう。作者ですらそんなありさまですから、読者の方が「揺れる」のは当然かもしれません。

劔持：それはわかります、読むたびに感触が変わりますよね。でも何度でも新鮮に読めるって、スゴい特長じゃないですか。日めくりカレンダーになって作品が生まれ変わるのはうれしいことですね。

木下：読んだことある人にも、初めて読む人にも、ぜひ楽しんでもらえたらと思っています。

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木下晋也の「日々、ポテン生活2022」カレンダー

劔持聡人
モーニング編集部在籍時に木下晋也作品を担当。現在は双葉社漫画アクション編集部在籍。

（おまけ）
木下晋也がモーニングに持ち込んだ『ポテン生活』の中から２つご紹介します。
※本編にも収録されています。