したら領 インタビュー 「迷ったら、最も自分らしい線を探して、引きます」

かわいいキャラクターたちと残酷な弱肉強食の描写、まばゆい朝の光と目の覚めるような血の色使い。Twitterで人気の『眠れないオオカミ』のカレンダーが販売中だ。

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『眠れないオオカミ』の大きな魅力の一つである”絵”をどのように描いているのか、作者のしたら領さんに伺いました。

(取材・構成 :山内宏泰

 ——カレンダーの絵がとても素敵です。したらさんの作品は、ストーリーや世界観とともに絵が非常に印象的ですね。どんなことを意識して描かれていますか?

 したら:カレンダーの絵、一枚ずつ楽しく描きました。画面のいろんなところに目をさ迷わせながら、長い時間をかけて観られる絵が僕は好きで、自分でもそういう絵を描きたいと思っています。

 

 ——長い時間観られる絵とは、どう描くのでしょう。

 したら:まず、観る人の視線が真っ先に向かうところをちゃんとつくる。そこからあちこちに視線が散らばっていって、でも最終的には最初に目が行った地点に視線が戻ってくる……。そんな目の動きを促せるように描けるといいですよね。

ちょっとパズルみたいですけど、そういうことを意識しながら描いたりしているので、カレンダーの絵でその工夫を読み取ってもらえたらうれしいです。

 

 ——画家のような感覚で絵を描いているということ……。それでも、したらさんは“漫画”に挑戦しているのが興味深いです。

 したら:漫画は絵とストーリーでできていて、どちらもしっかりやらないと面白いものにならない。それはわかっているんですが、もしも「世界で一番いい絵を描く力」と「世界で一番面白い物語を作る力」のどちらかを選ぶなら、いい絵を描く方が近道に見えたので、まずはそこから始めました。

 

 ——絵に対する思い入れは強いのですね。

したら: 絵を描くのは僕には自然なことで、もう食欲とか睡眠欲なんかと同じレベルの基本的欲求に近いです。仕事じゃなくても、何につながるわけじゃなくても、絵はただ好きでずっと描いています。

『眠れないオオカミ』で僕の作品を知ってもらった人は多いと思います。あの絵柄がいまの僕の作風ですが、そこに至るにはいろんな作家の影響を受けています。「ムーミン」のトーベ・ヤンソン、「タンタンの冒険」のエルジェ、日本ならちばあきお先生……。中でも強く影響されているのは、フランスの漫画表現「バンド・デシネ」です。ニコラ・ド・クレシーの絵はとくに好きで、色味なんかは彼の絵に近いかもしれません。

 

 ——古今東西、様々な作品から影響を受けているのですね。

したら: はい、ただ、単なる模倣で終わらないようにはしています。「この絵いいな」と思ったら、どこが響いたのか、なぜよく見えるのかをしっかり考えて、使える部分を抽出するように心がけていて。ただ一本の線を引くときも、どうしようか迷ったら、最も自分らしい線を引くという選択をしています。

 

 ——自分らしい線……。したらさんの「自分らしい絵」とはどんなものでしょうか? 

 したら:一番わかりやすいのは「猫背」なところでしょうか。キャラクターのシルエットが猫背で、肩が上がっていてどこか外国人っぽいんです。海外の絵から多くの影響を受けてきたからそうなったのかもしれません。

省略の加減にも、自分らしさが出ます。僕は背景などをびっしり描くタイプではありません。漫画というのは省略やデフォルメの表現を発展させてきたジャンルなので、あまりたくさんの線を使って描き込み過ぎないようにしたい。でもポイントとなる部分は細部までしっかり描く。そうやってメリハリをつけて、魅力的な嘘によって成立してる絵を描きたいです。

 

 ——確かに、作中で草木の細かい表現があるかと思えば、空の色の大胆な色使いもあって、そのメリハリがとても魅力的です。

 したら:今回、カレンダーでは、季節の植物を丁寧に描くようにしたら、月ごとの雰囲気をうまく出せるようになりました。

そういえば、普段から、時間を表すときには移り変わる自然の光景を描写していることに、改めて気づきました。たとえば日暮れどきなら夕焼け、真夜中なら濃い闇空で、明け方だったら白んできた空を描く。時計を直接描いたりしないかぎり、時間は色でしか表せないものだと思っています。

 

——時間を自然の色で表すという考え方が面白いですね。最後に『眠れないオオカミ』のファンへ一言お願いします。

 このカレンダーには、いま僕が持っているかぎりの絵の力を注ぎ込んでいます。ぜひ実物を手に取って見ていただけたらうれしいです。

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