「最高に食べたくなるお肉がパズルになった」[後編]はらぺこめがねインタビュー
2021.08.08.「にくのくに」の表紙と裏表紙には、生のお肉の絵が描かれている!見ていると、生つばが出てきてしまう人も多いかもしれない。そのお肉がパズルになったということで、はらぺこめがねさんにインタビュー。パズルの楽しみ方は、原田しんやさんは飾る派で、関かおりさんは、とことん遊ぶ派。後編をどうぞ。
お肉のモデルは、とうがらし
── パズルにもなった表紙のお肉が美味しそうです。インタビュー前にお肉屋さんに行ったんですけど、こんな魅力的なお肉はありませんでした。
関かおり(以後関):近所にいいお肉屋さんがあるんです。牛を一頭買いして、お店で解体してるのもあって、めちゃめちゃ美味しい。
原田しんや(以後原):お肉は、絶対そこやな。パズルのお肉も、「にくのくに」のからあげもハンバーグのお肉も、そこで買いました。
── この美味しい感じは、A5のお肉でしょうか。
原:たぶんA5やと思います。とうがらしという部位でした。なんかね、きれいで、サシもよくて、肉っぽさがあるなと思って‥‥。モデルにしたかったんで、厚めに切ってもらいました。
関:これぞ牛って感じで、かたまりでね。いいですよね。
原:そうやね。とうがらしがよかったというより、この肉の個性がよかったんです。
関:一期一会です(笑)。
最高に食べたくなるお肉です。
── このお肉は食べたくなりますね。
原:ありがとうございます。お肉を描くのは僕の担当で、これを描くにあたって、本物のまんまでは描いてないんです。もっとサシも細かく入っていただろうけど、美味しそうに見えるようにざっくり描こうとか‥‥きれいに見えるバランスを探っていました。
関:すごく挑戦していたね。
原:左下の脂のかたまりから、こうつながっていて、なかに入ってるんやなーと観察するのが楽しいです。ここらへんは描きたいポイントでもあります。側面と上面の境目に、美味しそうな魅力を感じている場所があるんです。
関:そんな場所があるんだね。
原:あるある。ポイントがあるんですよ。
原:左の側面の脂が回り込んでいっている、ちょっとしたふくらみとか、赤みと脂のところをつるんと書くんじゃなくて、ちゃんと盛り上がりを描くと、美味しそうに見えるやろなとか‥‥。
関:ああ、つるんと描くんじゃなくて?
原:そうそう。なかなか自分で説明するんは難しいんやけど、そこが楽しかったりするところです(笑)。
お肉だけが、パズルになった
── お肉だけが、パズルになったことの感想は、いかがですか。
関:めちゃうめちゃ、うれしかった!(笑)
原:うれしかったし、ほんまにいいんかなと‥‥なかなかシュールやし(笑)。
関:ふだん娘とパズルするんですけど、やっぱりデザインがごちゃごちゃしている。それも楽しいと思うんですけど、「こういうインパクトがあって、ストレートでシンプルなパズルがあったらいいな」と思っていたんです。
原:どっちかというと、「このパッケージみたいな雰囲気のパズルはある」と思うんやけど‥‥なかなか肉だけはね。
関:そうそうそう。「にくのくに」の表紙の打ち合わせのときも、編集者さんに絵本の中の楽しさが、表紙と出会う読者にも伝わるよう「王さまも出したい」と言われたんです。
原:でも、僕らはどうしても肉をばんっと出したいから‥‥肉のインパクトがうすまらないようずっと考えていて‥‥。
関:お肉で行きたいし、お肉で子どもに伝わるし、そこは分かっていたんで、がんばっていたら、すてきな落書きの表紙の案が出てきたんです。でも逆に今回、潔くお肉だけのパズルがつくれたのは、うれしかった!
原:そうそうそう。でも、僕は「それで売れるんかな」と思いましたね(笑)。
関:そっちの心配はあるけど‥‥。でも、こういう潔いインパクトがあるのは、どこにもない気がするから‥‥自分たちの絵だからというわけじゃなくて、もっとあってもいいかな。
原:それは、そうよ。
(パズルはお肉のみですが、パッケージは王さまたちでわいわいデザイン)
パズルとしては難しそうだけど
── 確かにシンプルでインパクトがあります。
関:私はパズルがめちゃめちゃ好きなんですよ。しかもこのパズルは難しいですよね。「何回でも楽しめそうだな」と思っています。
原:絶対、むずいと思う。
関:サシのとことか難しい。それがいいなぁと思って。
原:だって、まっしろのとこもあるしね。でも、僕は描いた人やから、意外に早くできると思う(笑)。
関:シンプルだからやりがいもあるし、できたときに所有物としてこれを持っていたいし、難しいから愛せる。
(実際に、インタビュー中におふたりはパズルに挑戦。原田さんは、まんなかから絵柄を見ながらスピーディーにはめていく。関さんは、はじっこから攻めていく。確かに原田さんは将棋の早指しのように早かった)
── きっと無心になれますね
関:きっとなる!描くとは違う感覚で、細部をすごく見ながらつくりあげていく。
原:恥ずかしいわ、描いた側からすると。まじまじと見られるわけでしょ。
全員 大笑い
原:なかなかね、僕らみたいに絵を描かへん人は、食材をまじまじと見ることが少ないから。このパズルをつくりながら、観察してもらえば、おもしろいかもしれない。
関:確かに。お子さんも生肉をちゃんと見ることないし、触る機会がなさそうだし。
原:見ないよね。ふだん、調理して食べるだけやと、やっぱし見ないんですよね。
関:そうだよね。
パズルをつくって、お肉を食べる
── どんなふうに楽しんでほしいですか?
関:パズルをつくって、その日はお肉を食べる。
原:まあねー。普通やけどな。
関:それは普通か―(笑)。どう楽しむか。何回もやって、これはノリでくっつけて貼るのが最終かな?
── それは、それぞれです。ちなみに、今回のパズルに専用ノリは同梱しています。
原:飾ってほしいかな。
関:私、ケチだから何回も楽しみたい(笑)。
原:何回もしていいんだけど、「もうええかな」と思ったら、飾ってほしい。これを引きで見たら、また見え方も変わるしな。
関:ああ。
原:近いとパズルと思ってみるけど、引いたときには、絵として見えるから。このお肉を一枚、お部屋に飾っていただいて、その日はお肉を食べていただく(笑)。
関:やっぱり食べるんか(笑)。
── 確かに!きっと、食べたくなりますよね。
原:これを焼いて調理したくなる。このお肉と戯れながら、その人が「お肉を食べたいな」と思ったら、その日にお肉を食べてもらってもいいし、これを参考にお肉を買いに行ってもらってもいい。
関:お肉を頭に巡らせながら、赤みとサシのバランスを考えながら、「赤みが多い方がいいな」、「脂が濃すぎそうやな」とか、考えてくれたらおもしろいかも。
原:そうそうそう。
── お話を聞いていたら、食べたい気持ちが増してきました。
関:お料理として遊べそう。箱から出して「さぁ、お肉を焼きますよー」。
原:食べ物やからね。なんとでもなる。
お肉パズルは飾りたい
── のちほどパズルはお送りしますね。これでふたつになります。
関:いいんですか。やったー!
原:ひとつは貼る?これは飾ると映えますよね。僕らは自分の絵は飾らへんからね。今は個展が終わったばかりなので、ひとつだけあるけど‥‥お肉パズルは飾りたい。
── いろんなお宅で飾られる可能性がありますね。
関:えーうれしい。飾ってほしい(笑)。
原:飾ってくれたら、ええけど、みなさん、どうされるんでしょうね。
関:飾りたくならへんのかな。
原:なると思うんやけど。
関:すごくなりそうな気がするんだけど、特に、お肉好きな人とか。
原:額装してもいいわけでしょ。僕の実家はパズルを額装して飾っていた。
関:あー!あったなあ!
関:あと、ピースのラインが入った姿が、さらにかわいい。
原:ピースのラインは絵によって、合う、合わへんはあると思うけど、お肉パズルには、似合っているね。
関:似合ってる気がする―。
原:ピースひとつひとつが、かわいいよね。
関:かわいい(笑)。
── おふたりのお肉パズル愛が満ちあふれてきました。「最高に食べたくなるお肉がパズルになった」のお話は、ここで終わりです。ありがとうございました。
(はらぺこさんの掲げるモットー。「おいしいものはうつくしく、人と人とをつなぎ合わせる力があると信じています」)
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(ライティング:簀河原由朗、撮影:竹田 あやこ)