「最高に食べたくなるお肉がパズルになった」[後編]はらぺこめがねインタビュー

「にくのくに」の表紙と裏表紙には、生のお肉の絵が描かれている!見ていると、生つばが出てきてしまう人も多いかもしれない。そのお肉がパズルになったということで、はらぺこめがねさんにインタビュー。パズルの楽しみ方は、原田しんやさんは飾る派で、関かおりさんは、とことん遊ぶ派。後編をどうぞ。

お肉のモデルは、とうがらし



── パズルにもなった表紙のお肉が美味しそうです。インタビュー前にお肉屋さんに行ったんですけど、こんな魅力的なお肉はありませんでした。

関かおり(以後関):近所にいいお肉屋さんがあるんです。牛を一頭買いして、お店で解体してるのもあって、めちゃめちゃ美味しい。

原田しんや(以後原):お肉は、絶対そこやな。パズルのお肉も、「にくのくに」のからあげもハンバーグのお肉も、そこで買いました。

── この美味しい感じは、A5のお肉でしょうか。

原:たぶんA5やと思います。とうがらしという部位でした。なんかね、きれいで、サシもよくて、肉っぽさがあるなと思って‥‥。モデルにしたかったんで、厚めに切ってもらいました。

関:これぞ牛って感じで、かたまりでね。いいですよね。

原:そうやね。とうがらしがよかったというより、この肉の個性がよかったんです。

関:一期一会です(笑)。



最高に食べたくなるお肉です。

── このお肉は食べたくなりますね。

原:ありがとうございます。お肉を描くのは僕の担当で、これを描くにあたって、本物のまんまでは描いてないんです。もっとサシも細かく入っていただろうけど、美味しそうに見えるようにざっくり描こうとか‥‥きれいに見えるバランスを探っていました。

関:すごく挑戦していたね。



原:左下の脂のかたまりから、こうつながっていて、なかに入ってるんやなーと観察するのが楽しいです。ここらへんは描きたいポイントでもあります。側面と上面の境目に、美味しそうな魅力を感じている場所があるんです。

関:そんな場所があるんだね。

原:あるある。ポイントがあるんですよ。

原:左の側面の脂が回り込んでいっている、ちょっとしたふくらみとか、赤みと脂のところをつるんと書くんじゃなくて、ちゃんと盛り上がりを描くと、美味しそうに見えるやろなとか‥‥。

関:ああ、つるんと描くんじゃなくて?

原:そうそう。なかなか自分で説明するんは難しいんやけど、そこが楽しかったりするところです(笑)。

お肉だけが、パズルになった



── お肉だけが、パズルになったことの感想は、いかがですか。

関:めちゃうめちゃ、うれしかった!(笑)

原:うれしかったし、ほんまにいいんかなと‥‥なかなかシュールやし(笑)。

関:ふだん娘とパズルするんですけど、やっぱりデザインがごちゃごちゃしている。それも楽しいと思うんですけど、「こういうインパクトがあって、ストレートでシンプルなパズルがあったらいいな」と思っていたんです。

原:どっちかというと、「このパッケージみたいな雰囲気のパズルはある」と思うんやけど‥‥なかなか肉だけはね。

関:そうそうそう。「にくのくに」の表紙の打ち合わせのときも、編集者さんに絵本の中の楽しさが、表紙と出会う読者にも伝わるよう「王さまも出したい」と言われたんです。

原:でも、僕らはどうしても肉をばんっと出したいから‥‥肉のインパクトがうすまらないようずっと考えていて‥‥。

関:お肉で行きたいし、お肉で子どもに伝わるし、そこは分かっていたんで、がんばっていたら、すてきな落書きの表紙の案が出てきたんです。でも逆に今回、潔くお肉だけのパズルがつくれたのは、うれしかった!

原:そうそうそう。でも、僕は「それで売れるんかな」と思いましたね(笑)。

関:そっちの心配はあるけど‥‥。でも、こういう潔いインパクトがあるのは、どこにもない気がするから‥‥自分たちの絵だからというわけじゃなくて、もっとあってもいいかな。

原:それは、そうよ。



(パズルはお肉のみですが、パッケージは王さまたちでわいわいデザイン)

パズルとしては難しそうだけど

── 確かにシンプルでインパクトがあります。

関:私はパズルがめちゃめちゃ好きなんですよ。しかもこのパズルは難しいですよね。「何回でも楽しめそうだな」と思っています。

原:絶対、むずいと思う。

関:サシのとことか難しい。それがいいなぁと思って。

原:だって、まっしろのとこもあるしね。でも、僕は描いた人やから、意外に早くできると思う(笑)。

関:シンプルだからやりがいもあるし、できたときに所有物としてこれを持っていたいし、難しいから愛せる。



(実際に、インタビュー中におふたりはパズルに挑戦。原田さんは、まんなかから絵柄を見ながらスピーディーにはめていく。関さんは、はじっこから攻めていく。確かに原田さんは将棋の早指しのように早かった)

── きっと無心になれますね

関:きっとなる!描くとは違う感覚で、細部をすごく見ながらつくりあげていく。

原:恥ずかしいわ、描いた側からすると。まじまじと見られるわけでしょ。

全員 大笑い

原:なかなかね、僕らみたいに絵を描かへん人は、食材をまじまじと見ることが少ないから。このパズルをつくりながら、観察してもらえば、おもしろいかもしれない。

関:確かに。お子さんも生肉をちゃんと見ることないし、触る機会がなさそうだし。

原:見ないよね。ふだん、調理して食べるだけやと、やっぱし見ないんですよね。

関:そうだよね。

パズルをつくって、お肉を食べる

── どんなふうに楽しんでほしいですか?

関:パズルをつくって、その日はお肉を食べる。

原:まあねー。普通やけどな。

関:それは普通か―(笑)。どう楽しむか。何回もやって、これはノリでくっつけて貼るのが最終かな?

── それは、それぞれです。ちなみに、今回のパズルに専用ノリは同梱しています。

原:飾ってほしいかな。

関:私、ケチだから何回も楽しみたい(笑)。

原:何回もしていいんだけど、「もうええかな」と思ったら、飾ってほしい。これを引きで見たら、また見え方も変わるしな。

関:ああ。



原:近いとパズルと思ってみるけど、引いたときには、絵として見えるから。このお肉を一枚、お部屋に飾っていただいて、その日はお肉を食べていただく(笑)。

関:やっぱり食べるんか(笑)。

── 確かに!きっと、食べたくなりますよね。

原:これを焼いて調理したくなる。このお肉と戯れながら、その人が「お肉を食べたいな」と思ったら、その日にお肉を食べてもらってもいいし、これを参考にお肉を買いに行ってもらってもいい。

関:お肉を頭に巡らせながら、赤みとサシのバランスを考えながら、「赤みが多い方がいいな」、「脂が濃すぎそうやな」とか、考えてくれたらおもしろいかも。

原:そうそうそう。

── お話を聞いていたら、食べたい気持ちが増してきました。

関:お料理として遊べそう。箱から出して「さぁ、お肉を焼きますよー」。

原:食べ物やからね。なんとでもなる。

お肉パズルは飾りたい

── のちほどパズルはお送りしますね。これでふたつになります。

関:いいんですか。やったー!

原:ひとつは貼る?これは飾ると映えますよね。僕らは自分の絵は飾らへんからね。今は個展が終わったばかりなので、ひとつだけあるけど‥‥お肉パズルは飾りたい。



── いろんなお宅で飾られる可能性がありますね。

関:えーうれしい。飾ってほしい(笑)。

原:飾ってくれたら、ええけど、みなさん、どうされるんでしょうね。

関:飾りたくならへんのかな。

原:なると思うんやけど。

関:すごくなりそうな気がするんだけど、特に、お肉好きな人とか。

原:額装してもいいわけでしょ。僕の実家はパズルを額装して飾っていた。

関:あー!あったなあ!

関:あと、ピースのラインが入った姿が、さらにかわいい。

原:ピースのラインは絵によって、合う、合わへんはあると思うけど、お肉パズルには、似合っているね。



関:似合ってる気がする―。

原:ピースひとつひとつが、かわいいよね。

関:かわいい(笑)。

── おふたりのお肉パズル愛が満ちあふれてきました。「最高に食べたくなるお肉がパズルになった」のお話は、ここで終わりです。ありがとうございました。

(はらぺこさんの掲げるモットー。「おいしいものはうつくしく、人と人とをつなぎ合わせる力があると信じています」)

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(ライティング:簀河原由朗、撮影:竹田 あやこ)