「にくのくに」のお肉の話。モデルとなったからあげ、平和のすき焼き[前編]はらぺこめがねインタビュー

「食べ物と人」をテーマに、絵本をつくり続けてきた、はらぺこめがねさん。15作目は「にくのくに」。にくのくにのいちばんの王さまを決める一日が描かれている。その表紙のお肉が、パズルになった!ということで、はらぺこめがねさんにお肉の話をインタビュー。原田しんやさんはお肉担当で、関かおりさんは王さま担当で描いている。前編をどうぞ。

タイトルはトップシークレットでした

 

── 「にくのくに」というタイトルが、すてきです。

原田しんや(以後原):編集者さんが、僕らの以前描いた「すきやき」という絵本の表紙のお肉が大好きで‥‥。僕もお肉は食べるのも描くのも好きやし、お肉をテーマにするのは、すぐに決まりました。そこからどうするかーって考えていて、「にくのくに」というタイトルが出てきました。

関かおり(以後関):タイトルから決まるというのは初めてやった!

原:アイデア出ししているときに、ふと出てきて、楽しい感じやし。

関:ありそうでなかったんです。シンプルでいて回文にもなっている、このタイトルを編集者さんが検索したところ、まだ「出ていない!」となって。

原:それから「にくのくに」というタイトルは、マル秘というか極秘というか、トップシークレットになりました。

王さま担当は関さん、お肉担当は原田さん

── そこから、どうなったんですか。

原:まぁ、いろいろあったんですけど、打ち合わせ中やったかな。彼女が王さまのスケッチを何パターンも描いてて、それを見て、いろんな王さまが出てきたらおもしろいんちゃうと思ったんです。王さまと、王さまが好きなお肉料理を出していけば、僕らが描きたい物語になるなーと。美味しい食べ物もいっぱい出せますし。 



── かわいい王さまとインパクトがあるお肉が交互に出てきて、楽しかったです。

原:今までの絵本のように1ページをふたりで仕上げるのではなく、王さまページは彼女が担当で、お肉は僕が担当と完全に切り分けたのが、意外と初めてでした。その対比も見どころのひとつです。

関:急にリアルなお肉が、ドーンと出てきてね(笑)。

原:そうそうそう。

── 王さまも個性的ですね。

関:勝手に個性が出るというか、お肉の特徴をとらえていったら、いろんな王さまになったんです。

 

自作のお肉料理をモチーフに

── どのお肉料理も、美味しさがあふれていて食べたくなります。

原:ネットで「どういうのが、いちばんからあげらしく見えるのか」を探してみたり、自分でからあげを描いてみたり。まずは理想をカタチにしてみるんです。

それから自分の描きたいからあげを探して、デパ地下やからあげ屋さんに行って、そこで見つかればそれを描くんですけど、見つからなかったんです。それで、「自分でつくったほうが早いかもしれんなー」と思って、つくりました。

 

── お店のからあげと原田さんがつくったからあげは、どこが違うんですか。

原:ちょっとしたことなんですけど、形とか大きさとか衣とか。

関:家庭的な部分を入れると、みんなの頭のなかにあるからあげ像に近づくと思っているので、そこも考えていましたね。

原:そうそう。そこは誰かのレシピ本を見たりして研究してね。本当は探せば見つかるんだと思うんだけど、僕らの力では探しきれなかった。

関:例えばいいからあげ定食が見つかっても、こんなに山積みしてもらえない(笑)。

原:定食と言っても56個じゃないですか。理想は山積みやから、いいからあげを買ってきて家で盛り付けるとなると、自分で揚げたからあげを盛り付けて描くという方がいい。一枚のもも肉を買ってくれば、自分で大きさを決められるし、形も選べる。なんてったって揚げたてやしね。

関:意外にがんばればできる!

原:料理が好きで、食べるのが好きじゃないと、そこまでできないから‥‥そこは、はらぺこめがねらしさでもあると思っていますけどね。

 

── 関さんも、料理に参加されるんですか。

関:私は言うことは言います(笑)。盛り付けも手伝ったりします。

原:結局、ハンバーグ、ローストビーフ、すき焼きもつくったんですよ。

関:あのハンバーグは美味しかった。

原:とんかつは、お店のほうが美味しそうに見えるので、とんかつ屋さんを巡りました。

── それも楽しそう。「にくのくに」の完成とともに、ますます原田さんの肉料理の腕は上がりましたか?

関:上がっていると思います(笑)。

 
(アトリエに面したキッチン。はらぺこ家の美味しい料理はここで生み出されている)

おふたりともすき焼きがいちばん好き?

── ご夫婦それぞれで、いちばん好きなお肉料理はなんですか。

原:いちおう、すき焼きということにしてるけどね。確か「にくのくに」の奥付にはそう書いています。ほんまは好きな食べ物は、決められへんというか、決めたくないんですけど。食べるんが大好きな人は、僕と同じように決められへん人が多いと思う。



関:今年好きなお肉料理とかでもいいんだけど。

原:いやいやいや、無理やなー。

関:一か月限定とかは?

原:なんで決めれんねん。

関:ダメみたいです(笑)。

原:ダメと言うか、あれも好き、これも好きやから。本当に決められへん。でもやっぱり、すき焼きなんかなぁ。すき焼きって奥付に書いているし(笑)。

 

── 決められないけど、すき焼きでしょうか。

関:すき焼きは、よく作るし、よく食べる。

原:強いて言うなら、やっぱりすき焼きかなぁ。ひとくち目食べたときの喜びが、すき焼きはすごいから。

関:お肉を食べる料理だなぁと。

原:すごいと思うのは、やっぱり、すき焼きかもしれないですね。醤油とザラメだけで、いい肉を食べたときのあの瞬間はそりゃあもう!せやな、うん、すき焼きでいいか。すき焼きにしておきましょう。鍋ひとつをみんなで囲めるし、家族団らん感もある。

関:スキヤキ王のすき焼きは、けんか腰の王さまたちを最後にハッピーエンドにしてくれた。

原:平和の象徴は強い(笑)。

── 前編のインタビューでは、おふたりの好きなお肉料理は、すき焼きに決着しました。後編に続きます。

 

(おふたりのアトリエには「めがね」コレクションもたくさん)

はらぺこめがね/ にくのくに 108ピースのにくいパズルのご購入はこちらから

はらぺこめがねの作家・作品情報はこちらから

 

▶︎「最高に食べたくなるお肉がパズルになった」[後編]はらぺこめがねインタビュー はこちらからどうぞ!◀︎

(ライティング:簀河原由朗、撮影:竹田 あやこ)