「にくのくに」のお肉の話。モデルとなったからあげ、平和のすき焼き[前編]はらぺこめがねインタビュー
2021.08.08.「食べ物と人」をテーマに、絵本をつくり続けてきた、はらぺこめがねさん。15作目は「にくのくに」。にくのくにのいちばんの王さまを決める一日が描かれている。その表紙のお肉が、パズルになった!ということで、はらぺこめがねさんにお肉の話をインタビュー。原田しんやさんはお肉担当で、関かおりさんは王さま担当で描いている。前編をどうぞ。
タイトルはトップシークレットでした
── 「にくのくに」というタイトルが、すてきです。
原田しんや(以後原):編集者さんが、僕らの以前描いた「すきやき」という絵本の表紙のお肉が大好きで‥‥。僕もお肉は食べるのも描くのも好きやし、お肉をテーマにするのは、すぐに決まりました。そこからどうするかーって考えていて、「にくのくに」というタイトルが出てきました。
関かおり(以後関):タイトルから決まるというのは初めてやった!
原:アイデア出ししているときに、ふと出てきて、楽しい感じやし。
関:ありそうでなかったんです。シンプルでいて回文にもなっている、このタイトルを編集者さんが検索したところ、まだ「出ていない!」となって。
原:それから「にくのくに」というタイトルは、マル秘というか極秘というか、トップシークレットになりました。
王さま担当は関さん、お肉担当は原田さん
── そこから、どうなったんですか。
原:まぁ、いろいろあったんですけど、打ち合わせ中やったかな。彼女が王さまのスケッチを何パターンも描いてて、それを見て、いろんな王さまが出てきたらおもしろいんちゃうと思ったんです。王さまと、王さまが好きなお肉料理を出していけば、僕らが描きたい物語になるなーと。美味しい食べ物もいっぱい出せますし。
── かわいい王さまとインパクトがあるお肉が交互に出てきて、楽しかったです。
原:今までの絵本のように1ページをふたりで仕上げるのではなく、王さまページは彼女が担当で、お肉は僕が担当と完全に切り分けたのが、意外と初めてでした。その対比も見どころのひとつです。
関:急にリアルなお肉が、ドーンと出てきてね(笑)。
原:そうそうそう。
── 王さまも個性的ですね。
関:勝手に個性が出るというか、お肉の特徴をとらえていったら、いろんな王さまになったんです。
自作のお肉料理をモチーフに
── どのお肉料理も、美味しさがあふれていて食べたくなります。
原:ネットで「どういうのが、いちばんからあげらしく見えるのか」を探してみたり、自分でからあげを描いてみたり。まずは理想をカタチにしてみるんです。
それから自分の描きたいからあげを探して、デパ地下やからあげ屋さんに行って、そこで見つかればそれを描くんですけど、見つからなかったんです。それで、「自分でつくったほうが早いかもしれんなー」と思って、つくりました。
── お店のからあげと原田さんがつくったからあげは、どこが違うんですか。
原:ちょっとしたことなんですけど、形とか大きさとか衣とか。
関:家庭的な部分を入れると、みんなの頭のなかにあるからあげ像に近づくと思っているので、そこも考えていましたね。
原:そうそう。そこは誰かのレシピ本を見たりして研究してね。本当は探せば見つかるんだと思うんだけど、僕らの力では探しきれなかった。
関:例えばいいからあげ定食が見つかっても、こんなに山積みしてもらえない(笑)。
原:定食と言っても5~6個じゃないですか。理想は山積みやから、いいからあげを買ってきて家で盛り付けるとなると、自分で揚げたからあげを盛り付けて描くという方がいい。一枚のもも肉を買ってくれば、自分で大きさを決められるし、形も選べる。なんてったって揚げたてやしね。
関:意外にがんばればできる!
原:料理が好きで、食べるのが好きじゃないと、そこまでできないから‥‥そこは、はらぺこめがねらしさでもあると思っていますけどね。
── 関さんも、料理に参加されるんですか。
関:私は言うことは言います(笑)。盛り付けも手伝ったりします。
原:結局、ハンバーグ、ローストビーフ、すき焼きもつくったんですよ。
関:あのハンバーグは美味しかった。
原:とんかつは、お店のほうが美味しそうに見えるので、とんかつ屋さんを巡りました。
── それも楽しそう。「にくのくに」の完成とともに、ますます原田さんの肉料理の腕は上がりましたか?
関:上がっていると思います(笑)。
(アトリエに面したキッチン。はらぺこ家の美味しい料理はここで生み出されている)
おふたりともすき焼きがいちばん好き?
── ご夫婦それぞれで、いちばん好きなお肉料理はなんですか。
原:いちおう、すき焼きということにしてるけどね。確か「にくのくに」の奥付にはそう書いています。ほんまは好きな食べ物は、決められへんというか、決めたくないんですけど。食べるんが大好きな人は、僕と同じように決められへん人が多いと思う。
関:今年好きなお肉料理とかでもいいんだけど。
原:いやいやいや、無理やなー。
関:一か月限定とかは?
原:なんで決めれんねん。
関:ダメみたいです(笑)。
原:ダメと言うか、あれも好き、これも好きやから。本当に決められへん。でもやっぱり、すき焼きなんかなぁ。すき焼きって奥付に書いているし(笑)。
── 決められないけど、すき焼きでしょうか。
関:すき焼きは、よく作るし、よく食べる。
原:強いて言うなら、やっぱりすき焼きかなぁ。ひとくち目食べたときの喜びが、すき焼きはすごいから。
関:お肉を食べる料理だなぁと。
原:すごいと思うのは、やっぱり、すき焼きかもしれないですね。醤油とザラメだけで、いい肉を食べたときのあの瞬間はそりゃあもう!せやな、うん、すき焼きでいいか。すき焼きにしておきましょう。鍋ひとつをみんなで囲めるし、家族団らん感もある。
関:スキヤキ王のすき焼きは、けんか腰の王さまたちを最後にハッピーエンドにしてくれた。
原:平和の象徴は強い(笑)。
── 前編のインタビューでは、おふたりの好きなお肉料理は、すき焼きに決着しました。後編に続きます。
(おふたりのアトリエには「めがね」コレクションもたくさん)
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(ライティング:簀河原由朗、撮影:竹田 あやこ)